ちょっと大きな池のある公園に行ってみよう


12月に入ると寒さも厳しくなり、冬鳥たちがどんどん渡ってきます。前回は芝生などの開けた場所でツグミの個性を観察しましたが、今回は大きな池のある公園に行ってみましょう。
以前紹介したカルガモのほかに、いろいろな種類のカモがやってきますが、今回は遠くからでもはっきりと特徴がわかる白黒のカモ、キンクロハジロを紹介します。


頭から背中、尾羽にかけてほぼ真っ黒で脇腹が白いカモです。カルガモ(53-63cm)よりは一回り小さく、全長は40-47cm。目が黄色でちょっと怖い顔をしていますが、私の知人たちはこの目が好きという方も多くいます。
大きな特徴として、後頭部に寝癖のような羽毛があります。


また、翼を広げた白い帯状の白い線が出るのが特徴です。


キンクロハジロとは、ちょっと変わった名前ですが、漢字で表記すると「金黒羽白」となり、目の黄色(を金色に見て)、体の黒、翼の白をうまく組み合わせた名前だということがわかります。
ちなみに、白黒がはっきりしているのが雄で、全身がほぼ焦げ茶色のものが雌です。


目が黄色いことと、雄と同様に短いボサボサとした羽毛があることなどが特徴です。


淀みで、ゆったりぷかぷか。お堀も探してみよう


公園の池にやってくるキンクロハジロですが、水面の広い大きな川や沼、湖など、さまざまな環境にやってきます。このようにいろいろな水辺の環境に飛来するキンクロハジロですが、周囲に緑地がなくても平気で、必ずしも自然の豊かな水辺環境が必要ではありません。


しかし、彼らが好む環境には共通点がありまして、それは“流れが弱い”場所で“広く開けた水面がある”ということです。その理由は後でお伝えするとして、まずはそのような場所を探して、淀みでプカプカ浮いている姿がないかを、探していきましょう。お城のお堀なんていうのも、意外と彼らがよくいる場所の一つです。

水に潜るカモ


もしこのカモをしばらく双眼鏡でじっと観察していると、水に潜る行動が観察できると思います。キンクロハジロは、水草や水生昆虫、エビなどの甲殻類、貝類などを食べるのですが、それらを得るために水中に頻繁に潜ります。



キンクロハジロは、この“潜る”という行動のために、主に水面で餌を採るカルガモとは体の作りがかなり違っています。
まずは推進力となる“水かき”。体に対してとても大きくなっています。


人間がスキューバダイビングのときに足ヒレをつけた状態を思い浮かべていただければよいと思います。次に脚の位置。水かきで蹴った力がより効率よく伝わるように体の後方に脚がついています。ちょうど船のエンジンが船体の後方についているような感じです。そのため、陸上にあがると姿勢が直立になります。


水面で餌を食べ、潜ることがほとんどないカルガモの写真と比較してみてください。


このようなことから、水面に浮いているときの体型もカルガモとは異なります。カルガモが水面よりも上に尾羽が出ているのに、キンクロハジロは水面に着いています。(注1)


これはキンクロハジロの体重が潜りやすいように重くしてあるためです。水面で餌を採るカモと潜って餌を採るカモでは、このような体の構造に違いがあります。(注1:時々尾羽を立てて水面より上に上がることもあります)


離水が大変


水に潜ることには便利なキンクロハジロの体ですが、一つ難点もあります。それは水面から飛び立つときです。体が重いので助走が必要なのです。
飛びたつときに数mから10数m、必死に走って水面すれすれに離水し、ようやく体が空中に浮上します。そのため、前にお伝えしたように、広い水面が必要なのです。ちなみにカルガモやオシドリは水面からすぐに離水できます。


例えるならば、離陸時に、ヘリコプターは発着できる広場があればよくて、飛行機は滑走路が必要という違いです。


水面で羽づくろいをするキンクロハジロ


キンクロハジロは脚が体の後方についているために陸上での体のバランスは保ちにくいのか、カルガモのように頻繁に陸には上がりません。そのため羽づくろいを水上で行なうことが多い鳥で



特にお腹の羽を手入れする際に水面上に白いお腹を出すのです。




バードウォッチングを始めた間もない私の知人がこの様子を見たとき、水族館で人気者のラッコに毛づくろいの様子に非常に良く似ていてかわいらしいとニコニコしながら観察していました。これには、なるほどと思いました。

羽づくろいの途中に見られるものをもう一つ紹介しましょう。飛んでいるときには見えにくい翼の白い線です。水面ではばたいたり、翼を伸ばしたりするときがチャンスです。水浴びをした後などに羽づくろいをするので、そのような個体をまず見つけるのが良いと思います。



光の向きによって変わる“顔色”


カルガモを紹介したときに翼鏡(よくきょう)と呼ばれる金属光沢がある羽についてお話をしました。
キンクロハジロの翼にはそのような羽はないのですが、美しい金属光沢のある部分があります。それは顔です。ぜひ一度、天気のよい日に雄のキンクロハジロの顔をよく見てください。顔の部分が濃い紫色に反射して、とてもきれいです。


カルガモのきれいな翼鏡部分は背中とお腹の羽毛の間に隠れて見えないこともあるのですが、キンクロハジロの顔は常に出ていますので、曇っていても光の角度が良ければかなりの確率で見ることができます。


しかし、世の中には例外もあります。写真の個体は光の向きはよいのに、顔の金属光沢がほとんど見られません。


鳥の研究している方にお聞きしたら、若い個体は金属光沢が鈍いことが多いそうです。キンクロハジロの世界では、どうやら金属光沢が大人の印のようです。


オシドリのような派手さはないキンクロハジロですが、派手なことばかりが美しさではないことを教えてくれるキンクロハジロに、この冬、ぜひ出会いに行ってください。



撮影地:
神奈川県(座間市)、埼玉県(所沢市)、東京都(台東区、千代田区、三鷹市)


お勧め機種:
公園などではカモ類は人慣れしていることも多く、あまりがっちりした装備がなくてもよいので、気軽にポケットに入れられる軽量双眼鏡Orrosシリーズもお勧めです。
川幅の広い場所などでは明るくて色の再現力のよいエンデバーシリーズで、長時間見ても疲れにくい傾斜型の望遠鏡があると、より楽しめるでしょう。

<双眼鏡>
オーロス(Orros)シリーズ
エンデバーEDシリーズ

<スポッティングスコープ>
エンデバーHDシリーズ (傾斜型)



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