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20151125

第41回 ゆっくり歩いて、嘴一突き!ダイサギの緩急ある採餌を観察しよう

足の指が黒いサギ


しばらく小形の鳥を扱いましたので、今回は大形の鳥、ダイサギを紹介します。





これまで取り扱ってきたコサギアオサギと同じサギの仲間ですので、この連載をずっと読んでくださっている方には“細長い嘴、頸、足”という見慣れた体形。
全身が白く、大きさは90cmくらいで、アオサギとほぼ同じ大きさです。

日本では一年中生息しています。
全身白い羽は通年変わりませんが、季節によって嘴の色が変わります。
冬は嘴が黄色く、夏は、嘴が黒く、根元と目の間が綺麗な緑色になります。




広い水面のある水辺が好き


ダイサギは、広い湖沼や水田、干潟、大きな川などをよく見かけます。




重要なのは、広い空間と広い水辺がセットになった環境です。魚が大好物で、大きな川の堰堤など魚が多く見られる環境によく現れます。



アオサギと体の大きさと習性がよく似ているからか、アオサギの隣にダイサギがいることも珍しくありません。

しかし、最近は宅地内の草の生えた貯水池や



住宅のそばを流れる川など



小さな水辺にも現れる例も増えており、少しずつ生態を変化させているようにも感じられます。今後の動向が注目されています。


アオサギ、コサギとの見分け


ダイサギとアオサギはほぼ同じ大きさですが、色が大きく異なるため見分けは簡単です。




ダイサギ同様に全身が白いコサギとの見分けで始めのうちは迷うかもしれませんが、まずはコサギの方が小さいことが識別の入り口です。




秋〜冬にかけてのダイサギの嘴は黄色いのに対し、コサギは年中黒っぽいという違いも識別ポイントになります。



本当に迷ったときは足の指の色の確認をしましょう。コサギは黄色で、ダイサギは黒色です。




ダイサギを見るなら、冬がベスト!


実は日本で見られる足の指が黒いシラサギ類には、チュウサギやアマサギ冬羽などもいます。
「それじゃ足の指の色で見分けるのは無理じゃないか!」とお叱りをうけそうですが、チュウサギやアマサギは主に夏(春〜晩夏)に見られ、この連載が掲載される11月下旬にはほとんどが南へ渡っています。
つまり、ほかの“足の指の黒いシラサギ”がいないので、ダイサギの観察は秋から冬の間がベストというわけです。



頸曲げ飛行はみな一緒


ダイサギは、ほかのサギ類と同様に飛翔する際は頸を曲げて飛びます。





種としてそれぞれに違いはあっても、科という大きなグループでは行動や生態は似るので、野鳥観察に慣れてきたら、同じ科の鳥たちの共通の行動はどのような点があるのかを図鑑でチェックしたり、 “図鑑にはない共通点”を実際の観察で探ったりする習慣をつけておくと、スキルアップも格段に早くなります。


細くてひょろひょろ、妖怪ろくろくび?


これまでアオサギもコサギも頸が細長いと紹介をしてきましたが、ダイサギの頸は長さだけではなく、他の2種よりも私は“細さ”を感じます。




このため、頸を縮めている状態から伸ばす様子を初めて観察したときには、妖怪の“ろくろくび”が頭をよぎりました。この伸び縮みを見るとちょっと当時のことが脳裏に浮かびます。


のんびり歩いて、獲物に近づく


ダイサギの餌取りの開始は、足が半分くらい入るくらいの水深の場所をゆっくり歩くことから始まります。頸をしっかり伸ばしながら歩き、



水面下の魚の様子をうかがい、魚の動きを察知すると頭をしっかり固定して、




体を少しずつ前傾にしながら間合いを探り、最後は目にも留らぬ早業で水中へ嘴を突き刺します。




天候や太陽からの光の角度なども考えて獲物へのアプローチ方法を変えているようで、最初から姿勢を低くしていつでも獲物に嘴を突き刺せるように首を曲げたままゆっくり歩いて獲物を探すこともあります。


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餌取りに失敗することもありますが、それは魚が一枚上手だったという証拠。ダイサギは次のチャンスに向けて、何事もなかったかのように、またゆっくりと歩いていきます。


ダイサギは“鵜匠”!?


時折、川幅の狭い場所で泳ぎながら餌の魚を捕るカワウのそばをウロウロとしているダイサギに会うことがあります。




これはカワウが潜って魚捕りをしているときに、カワウの姿に驚いて川岸の方へ来た魚を狙っています。
鵜に自分の魚捕りの助けをさせるなんて、まるで鵜匠のような行動です。
いつも見られる行動ではないのですが、カワウとサギが両方見られる環境では観察できるチャンスも多くなりますので、注意してみましょう。


いい湯だな〜♪


ダイサギはサギの中では水浴びを観察する機会の多い種類です。
しかし、普通の鳥の水浴びとは少し様子が違っていて、最初は水浴びをしているようには見えません。
まるで湯船に浸かっているような状態をしばらく続けるのです。



初めて見たときには、怪我をしてうずくまっているのだろうと思ったほどです。そこから少しずつ羽を動かしてみたり、



頭や頸を水に沈めたり水浴びとわかる行動を始めます。



水浴びが終わると羽づくろいや頭かきをして羽を整えるのはほかの鳥と同じですが、これほどゆっくり水浴びできるのは、体が大きくて天敵が少ないことが要因だと想像しています。





行動観察は、おもしろい!


ダイサギはベテランバードウォッチャーやカメラマンにはあまり人気がありません。
キビタキのような美しい声やカワセミのようにハッとさせる色の羽毛がなく、さらに「探さなくても、よくいる」などが要因のようです。
そんなダイサギではありますが、じっくりと行動観察をしていると、興味深い面がたくさんあることがお分かり頂けたかと思います。

冬鳥が多く到着するまで、鳥のちょっと少ないこの時期は、ぜひダイサギの行動観察をお楽しみください。


撮影地:
神奈川県(開成町、平塚市)、埼玉県(川越市、坂戸市、狭山市、飯能市)、群馬県(館林市、千代田町)、山形県(酒田市)


お勧め機種
ゆっくりとした動きのダイサギの観察は双眼鏡でも楽しめますが、EDレンズ採用の機種ならば、白い羽毛の繊細さをより感じ取ることができるでしょう。
また、顔の表情まで観察できる高倍率接眼レンズを搭載した望遠鏡での観察もお勧めです。餌取りの様子など、長時間の観察には傾斜型が疲れは少なく、快適です。


<双眼鏡>

エンデバーED II シリーズ
エンデバーEDシリーズ
スピリットEDシリーズ

<スコープ>
エンデバーHDシリーズ(直視型)
エンデバーXFシリーズ(直視型)

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